メタルジャスティス 

メタルジャスティス 

~北海道のメタルジグの歴史と変革~

《メタル・ジャスティス》英文を直訳すると金属正義とか金属司法。

一般的にはアメリカのヘヴィメタルバンド“メタリカ”が発表した4作目のアルバムとして有名な単語だが、僕や友人の中では直訳の意味から釣りにおいてメタルジグをメインルアーとして頑なに使用するアングラーを指している。

 

同じ“メタル”という単語には釣りとは全くジャンルの違う音楽の“メタル”(一般的にヘビメタとかメタルと呼ばれる)があるが、皮肉なもので同じ単語というだけではなく歴史的流行の偏移もよく似ている。

次号のノースアングラーズでもメタルジグの話になるので、

まずは、道内の若いアングラーの皆さんに北海道におけるメタルジグの栄華衰退を、音楽と比較しながら簡単に説明しよう。

 

【黎明期】

北海道における海アメの釣りの礎を築いたのはキャスティング用のメタルジグであることは間違いない。島牧の海アメマス全盛期ともいえる20年ほど前までは、真正面から風と雪が吹き付ける江の島海岸に遠投自慢のアングラーがサーフにズラリと並んでいた。

現在のように専用ロッドもなくラインも高性能とは言えない時代なので、メタルジグは50g~70gというヘビーウェイトなものがメインとして使われ、中には80g以上を使う猛者もいた。それを100mほど沖のカケアガリ目掛けてフルキャストし、そこまで届いた者だけが登録クラスのアメマスを釣ることができる男塾のような時代だった。

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重圧で男くさい曲が流行した1970年代。ディープパープルやレッツドツェッぺリン、ブラックサバスなどが全盛だった時代のヘヴィメタルシーンと同時期にあたる。

 

 

 

【全盛期】

徐々に対象魚が海サクラマスに推移する中、ロッドやラインが急速に進化したことで使用されるメタルジグが30g~40g程度のライトウェイトなものが定番化する。

マスプロダクトモデルからハンドメイド系まで様々なメタルジグが登場したことでアングラー個人の選択肢が増えメタルジグは道内ショアフィッシングのメインルアーとして不動の地位を築き上げる。

老舗ハンドメイド系からメーカー系まで名作ジグの最盛期でもあり、現在のメタルジャスティスの中でも、この辺りの老舗ライトウェイトジグを今でも主力としている人が多い。

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派手な衣装とキャッチーな曲のハードロックや、より攻撃的で男くさいスラッシュメタルなど派生音楽をどんどん生み出した全盛期1980年代のメタルシーンと等しい。リスナーが選択するアーティストが増え名曲も数多く生まれた。現在のアーティストたちにもカバーされることで世代を超えたファンが多い。

 

 

 

 

【衰退期】

ジグがメインだった日本海の釣りが大きく変わることになったのがDUO社のタイドミノースリムの登場だろう。“良く飛び良く釣れる” ミノーが、もともとミノーファンの多いルアーアングラーの心をガッチリと鷲掴みにした。

メタルジグで遠投できる者がカッコよいとされていたシーンを『ミノーで釣れるならこっちのほうが良くね?』と一瞬で変えられてしまった北海道のルアーフィッシング史に残る変化だろう。これが渓流プラグファン(プラッガー)も海サクラをはじめるきかっけとなり、様々なメーカーから同じジャンルのスリム系ミノーが一気に増え、ほんの数年でプラッガーがメタルジャスティスの人口を一気に超えてしまう。

また、この衰退には似たようなライトウェイトメタルジグがメーカーやハンドメイド系から乱発されたことによる大飽和状態も影響している。

“メタルジグ胸やけ状態 ” のタイミングで、ジャクソン社からアスリートミノーが登場したことが決定打となり日本海の主役はミノーに移り変わった。

 

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1990年代初めにニルヴァーナがリリースしたネヴァーマインドという1枚のアルバムが今までのメタルシーンを一蹴したこととよく似ている。ヘヴィメタルやハードロックのようにゴリゴリのギターソロでテクニックを見せつけることがカッコ良いとされていた時代が、簡単に古い時代とされてしまった。

また当時は各レーベルから乱発された似たようなバンドや曲にファンが飽きていたのも災いした。

 

 

 

☆融合ルアーの登場☆

この頃、メタルジグのライトウェイト化と高性能スリムミノーの登場のなか、リセント社が発売したKJ11というルアーによりミノーとメタルジグの中間的存在のジグミノーというルアーが認知される。見た目はベイトフィッシュライクなミノーでありながらウェイトも20g~30g程度で扱いやすく、ライトウェイトジグ同様に広範囲を一気に探れるサーチベイト能力に長け、ミノー同様のボディはアピール性能だけじゃなくアングラーの使用欲も満たした。

まさに “ 良いとこどりの極み ” 的このジグミノーは大ブームとなる。

 

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ジグミノーはアーティストでいえばベビーメタルに近いのではないだろうか。

男心をくすぐるメタルサウンドにのせてアイドルが踊って歌うというありそうでなかったスタイルが一気にスターダムにのし上がったのは、メタルジグとミノーを融合させたジグミノーとよく似ている。

 

 

 

【再変革期】

衰退といってもメタルジグが不人気になったというわけではなく、むしろ過剰にフューチャーされていたものが通常値に落ち着いたといっていいだろう。これにより黎明期に起きていた「 このルアーでなければダメだよ」というプチ洗脳的なことが減り、シーズンや状況に応じて現実的なルアーをシビアに選択するアングラーが増えた。

この効果は似たものだらけだったメタルジグにも派生モデルを生みだすようになり、ルアーメーカーやハンドメイドビルダー共にメタルジグは鉛素材が主流だった時代から、メーカーは鉛以外の金属を主要原料とした“合金製メタルジグ”へと新しい方向へ舵を切り始めたところだ。

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リンキンパークやスリップノット、P.O.Dなどのように電子音楽やラップ、DJなどと融合したミクスチャー系のメタルバンドや、デスメタルと叙情的なメロディを融合させたメロディックデスメタルなどが台頭し、またそれによって往年のスタイルのメタルバンドも再評価されメタル人気が再燃化している。

ちなみに、世界的にもメタルアーティストにはルアーフィッシングファンが多い。以前ノースアングラーズにも登場した、友人の篠本竜司くん所属するメタルバンドGYZEは、デスメタルに叙情的なメロディや雅楽・民謡などを融合させたバンドだ。

 

 

 

 

あくまでも私的で大げさな見解ではあるが、皮肉にも北海道のメタルジグ文化は音楽のメタルと似たような栄華衰退をしていると思う。

 

現在、道内でのメタルジグによるキャスティングの釣りが、ちょっと新しい方向に進みだし、ミクスチャー的な合金素材の時代になってきている。

それについては4月発売号のノースアングラーズで。

と、たまには誌面の宣伝をしておこう。

 

 

D-3カスタムルアーズ 福士知之

 

 

 

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