福士知之
“明日の釣りには1つだけしかルアーを持参できません”
そう決められたとき、僕は 7gのスプーンを選択します。
色は 青銀。
迷うことはありません。
人によってルアーの好みは様々ですので、
5cmミノー・スピナー・メタルジグ などなど
選択肢は色々あると思います。
でも、最初の決まりごとには
“何処の釣り場に行くのか”
は、うたわれてません。
ボサ川かもしれませんし、本流・湖・海かもしれません。
小さな流れから海まで、たった1個で全ての釣りをこなすのは
スプーンだけだと僕は思っています。
小型ミノーで海や湖?ロングミノーで小渓流?スピナーで本流?
そう考えると、やはりスプーンは万能なんです。
数あるルアーの種類の中で、唯一、スプーンだけが1ピース構造です。
メタルジグはワイヤと合金の2ピース。
ミノーにいたっては5ピース以上の部品点数です。
どんな物でもそうですが、部品点数が多いほど後からの修正が容易ですが、
スプーンは部品点数1つです。
形状を最初に決めてしまうと、もう修正できません。
そこそこの飛距離と、そこそこのアクション。
そして、沈下を利用してレンジ操作もそこそこ出来ます。
万能ですが全ての能力に中途半端。というのがスプーンです。
ミノーのように、ただ巻いていれば安定してアクションしてくれません。
車に置き換えるとミノーは AT車・スプーンはMT車。
といった感じでしょうかね。
なので、使う側がアクションの足りない部分を補足しなくてはいけません。
ミノーからルアーフィッシングを始めた人で、
『川でのスプーンの使い方がよく分からない』
という方が多いのは、最初に楽なルアーでスタートしたからです。
昔話をするのは野暮ですが、ルアーを真剣に始めた頃に大先輩達から
『ちゃんとスプーンを使いこなせて一人前だ』
『お前、下手くそだな』
と言われたのが悔しくて、針を外したスプーンで
千歳川で一生懸命に操作を練習したのを覚えています。
シンプルだけに奥が深く、
力量差がハッキリと出るのがスプーンではないでしょうか。
設計するのもそうなんです。
昔から人気のあるスプーンは、だいたいどれも同じようなアクションです。
ほぼ同じリトリーブスピード域で振り幅が最大値になっています。
舶来物の名作も、安価な国内の名品も、最新鋭?っぽい今時のものも、
おおよそ同じ感じです。
スプーンは1ピースなので、個性を出すのが難しいんです。
そして、
使う場所や環境を優先した設計 ではなくて、
釣り人の使いやすさを優先して設計されることが多いので
みんな似たようなものになるんです。
僕もそうですよ。
道内のフィールドで使用するにあたって、
『この方がみんな何処でも使いやすいだろうなぁ』
と考えて作ります。
なので、
カスタムスプーンやベルスプーンが評価されているのだとおもいます。
使いやすいですから。
でも、ちょっと詰まらないですよね。
誰でも容易に扱える車は名車かもしれませんが、
マニア受けはしません。
スプーンも、もっと面白いのが作れるんじゃないかと思います。
アクションがピーキーで扱い難いが故に消えていった
オールドスプーンには、面白い形状やアクションのものがありました。
奇をてらったわけではなく、
何とか個性を出そうと真剣に工夫していたからこそ
奇怪なものが多かったんじゃないかと思います。
無駄なデザインなどを眺めているとかわいいですよね (笑)
長くなったので、また今度。