【晩夏の峡谷を遊ぶ】D3福士知之

数年前から、「古いアルバムをめくる釣り」というタイトルを自分で決め、

体力に自信のあるうちに、20代、30代の頃に仲間と通ったフィールドを、

もう一度巡ることを始めました。

時間と体力に余裕のあった若かりし頃、

道内のフィールドを、地域や河川の大小を問わず、あちこち駆け巡ってきました。

これらのフィールドをすべてもう一周するとなると、

今では少なくとも10年くらいはかかると思います。

そこで、限られた時間と体力を有効に使うため、

優先順位を決め、効率よく回ってみようと考えています。

10年後の自分の体力を考えると、今と同じように急な斜面を上り下りしたり、

激流を遡行したりすることは、難しくなっているかもしれません。

そのため、10年後でも無理なく歩けそうなフィールドは後回しにして、

まずは、山を越えて入るような深山や、険しい峡谷を流れる川など、

体力のある今だからこそ行っておきたい場所を優先することにしました。

当時から魚が薄かったり、景色だけ素晴らしかった河川もあり、

良かった河川も、現在は魚が残っているかもわからないような場所もあります。

釣果優先ではなく、その場に立つことを楽しむことが大切なこの釣行には

仙北谷君・鈴木君のスタッフ2人が快く付き合ってくれます。

釣果に拘らない体力自慢の頼もしい二人です。

前回は僕の提案で、25年前にはパラダイスだったフィールドへ仲間を誘いました。

ところが、崖崩れや河床低下によってすっかり様変わりした景色を目の当たりにし、愕然としました。

今回は仙北谷君の提案で、

以前に仲間と通っていた本流へ出会う小さな支流へ入ってみることにしました。

同じ水系で手を付けていなかった流れです。

これまで通ったことのない場所が残っているというのは嬉しいものですよね。

この流域は、本流・支流を問わず深いV字の峡谷を流れているため、

左右の切り立った崖からは大小さまざまな滝が流れ落ちています。

力強い渓相の中を歩いていると、それだけで気持ちがよくなるので、

体力が続く限り、年に一度は通い続けていきたいフィールドです。

この日も釣果はパッとせず、釣果だけみると寂しいものでしたが、

ルアーには見向きもせず、群れているアメマスが多く見られたので、

まだ産卵期だったのでしょう。

この河川に限らず、大きな岩を越えたり、斜面を上下する遡行は、

なかなか体力を使いますので、自分の装備を見直す良いきっかけにもなります。

速乾・軽量・安全。

フィールドに出ると、こうした具体的なお題に次々と直面します。

実際に自分の身体を使って自然の中で不便や危険を体験すると、

初めて見えてくるものがあります。

モノをデザインする者にとって、フィールドは常に新しい課題を与えてくれる場所ですから、こうやってフィールドに通い続けることが大切だと思います。

これらはKAIDとは別に、手をかけているプロジェクトに詰めてみたいと思います。

遥か先から見えていたミズナラの大きな倒木。

『あれは良いな』と目を付けていたとおり

近づくと一番上(と言っても倒木なので根の方)に、

ボリボリ(ナラタケ)の花が咲いていました。

 

リュックを下ろしながら

「仙北谷君、見てあれ」

と崖の上を指さすと、彼も嬉しそうな顔でバッグを腰から外します。

『あれを逃すとバチが当たりますね(笑)』

 

あれを採りに行くんだ…

という半分呆れ顔で笑っている鈴木君に釣りを任せて、

僕らは這い上がるルートの作戦会議。

 

困ったのが崖がほぼ垂直(と言っても感覚的に)に近いこと。

倒木の幹回りが4mくらいで長さは15mほどもある巨木なので斜度を見誤りますが、

見上げたキノコの傘が空を向いているのでかなりの斜度です。

木や笹の根をしっかり掴みながら登っていき、

滑落するくらいなら巨木と崖の間に挟まろう…

そう考え、キノコ隊2人は斜面に背中でへばりつきます。

魚も良いですが、こういうのが楽しいんです。

 

さて、もうすぐ落ち葉で釣りが難しくなるころですね。

木々の葉が落ち切るまではキノコ採りがメインになるかもしれません。

いえ、キノコ採りがメインだと思います。

 

【タックル】

ロッド:BKT-511LX4・BKT-E511

リール:ダイワ・イグジスト&セルテート/シマノ・ツインパワー

ライン:バリバス・サイトエディション4lb・6lb

ルアー:ダッドリーズ・バズロール

 

D3 福士知之

 

About the author: fukushi